kanossaのブログ

歴史小説や時代小説を綴ることを中心としたブログです。
簡単に読めるものを書いていきます。最初は、戦国時代
に主君大内義隆を殺害し、厳島の合戦で毛利元就に敗れ
散っていった陶晴賢(五郎→陶隆房→陶晴賢)を主人公
とした「TAKAFUSA」を書きすすめます。

ブログの写真を貼る練習です 記事ではありません

  鍋の写真です

TAKAFUSA その14 陶晴賢 爺の教え(二)

まえがき

今は陶晴賢子供時代のお話となっています。兄を失い、また愛犬タキを失うという悲しみも体験しながらも、父・母に厳しくも温かく育まれ・・・また、又二郎・百乃介・与吉などの仲間にもめぐまれ、浜の網元の娘お栄にほのかなあこがれを抱く五郎、泣いたり笑ったり危機に陥ったり・・・多感な少年時代をすごしています。また五郎は爺との絆を深めていきます。今回は、爺から甲冑をつけての剣術の稽古を受けます。


その14












又二郎が



「誰から行きましょうか」
 
「誰から・・・」
と爺はふっと笑った。
 
「四人いっぺんで・・・。爺を殺すつもりで参られよ!」
ときつい口調で言った。
 
「では遠慮なくいかせていただきます」というや否や、又二郎は、
「おおー」と爺の方へ向かった。
 
又二郎の鋭い剣をよけた爺は、又二郎に強烈な足払いを食わせ倒した上・・・
胸を強く踏みつけた。
「うおーー」と呻く又二郎。
 
爺は踵を返し、低い姿勢で猛烈な速さで百乃介に激しくぶつかると・・・
百乃介がふっ飛んだ。そのまま動かない。
 
すぐに、五郎が剣を上段で打ち込むと、それをよけもせず、
五郎の脇の甲冑の隙間に強烈な突きを入れた。
「ううー」と五郎が倒れた。
 
残った与吉に、
「ほれ、どうなされた・・・かかって参られよ」
 
「やあーー」と与吉が爺に向かうと・・・
 
なんと、爺が剣を投げた。
「えっ」と与吉が思っていると・・・爺が飛びついてきて、
そのまま地面を二人はもみ合いながら、ごろごろ転がった。
 
すると
「うえーー」と与吉が、声にならないような音を出した。
爺の右拳が与吉の喉輪(喉と胸の上部を防護する甲冑の小具足)
の上に炸裂していたのである。
 
五郎が一人、膝をついているだけで・・・
あとの三人は地面に転がったままである。
百乃介は気を失っていた。
 
爺は、百乃介に喝を入れ・・・意識を戻した。
 
「今日は少々手荒くやりましたが・・・これが戦でござる。
戦に手加減はありませぬ。一瞬の隙で、命を落としまする」
爺は首に手を当てて言った。
 
続けて、
「次またやる時にまで・・・どうすれば、自分の命をつなぐことができるか、
考えてきなされ」
と爺は真剣な表情で語った。
 
小さな背丈の爺が・・・四人にはとてつもなく大きく見えた。
 
すると爺は、がらりと表情を変え優しい顔になって、
「ほれ、そこの川で、水浴びしてきなされ・・・美味しいもの
つくって待っておりまするぞ」
 
四人はよれよれになりながら、川に向かった。
「爺は魔物のようですな・・・」とフラフラの百乃介が言った。
「まさに・・あーあー」という与吉の声が、まだおかしい。
「いつもの剣術と甲冑をつけたときでは・・・・
全然感じが違う。体が思うように動かぬし・・・」と首をひねる又二郎。
五郎が、脇をおさえながら・・・
「爺はすごい・・・でも戦場には爺のような奴もおるだろう」
などといろいろ話ながら・・・川の水を浴びた四人であった。
 
四人が屋敷の庭にも戻ると、食事の支度がすっかりできあがっておった。
「今日は鴨の味噌鍋と竹筒で炊いた飯ですぞ!」
 
「おーー」と四人は声をあげた。
「ほれ、ゆっくり食べなされ」と爺にたしなめられながら・・・
五郎たちは、食事をむさぼりついた。
 
「後藤様(爺の姓)、本当に旨いですーーー!・・・鴨だけでも・・なのに、
・・・椎茸までも」と、もう百乃介は何を言っているのかわからない。
目を見るとうっすらと涙が滲んでいる。
 
「生きててよかった・・・」と与吉。
 
「この竹の香りのする飯と・・・・梅干し・・ああ~」と五郎。
 
鴨を口に入れた又二郎は・・・じっと天を見上げていた。
 
爺は目を細めて・・・・五郎達を見つめていた。
 
うららかな陽が静かに照りわたる、午後のことであった。



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TAKAFUSA その14 陶晴賢 爺の教え(一)

まえがき

今は陶晴賢子供時代のお話となっています。兄を失い、また愛犬タキを失うという悲しみも体験しながらも、父・母に厳しくも温かく育まれ・・・また、又二郎・百乃介・与吉などの仲間にもめぐまれ、浜の網元の娘お栄にほのかなあこがれを抱く五郎、泣いたり笑ったり危機に陥ったり・・・多感な少年時代をすごしています。また五郎は爺との絆を深めていきます。今回は、爺から甲冑をつけての剣術の稽古を受けます。


その14












のどかな春の陽ざしの下、



朝から城の庭で又二郎と剣術の稽古を行っていた。
 
「五郎様、もうおわりですかな」
「なにをー!まだまだ」
「では、まいられよ」
五郎は又二郎と打ちあいを行っていたのだが・・・
(すげえ、又二郎のやつ、どんどんうまくなってやがる)
と驚くとともにあせりと悔しさを感じた。
五郎も自分なりには相当修錬を積んできたつもりではあったのに・・・。
 
又二郎は犬に襲われた一件以来・・・
塚原卜伝のようになりたいと思い、家中一の遣い手佐藤清兵衛のもとへも通ったりして、
それこそ火のようになって稽古に取りくんでいたのであった。
その着物の下は・・・全身痣だらけになるほどに。
 
そこへちょうど五郎の父である陶興房があらわれた。
「おー・・・おもしろいものを使っておるな。それはなんじゃ」
 
「これは爺がくれたもので・・・
竹を割ったものを束にして牛の革で巻いたものです」
と流れる汗を拭きながら五郎が答えた。
 
「なるほど、考えたものじゃ・・・これなら、
打ち込みがあたっても、そこまで大きな
ことにはならぬな」
 
「なんでも爺が卜伝様のところにおられた時に、若い剣術遣いから
こういうものはどうかという話を聞いて・・・おもしろいということで
こっちへ戻ってから作ってみたそうです。
爺は・・・これに『仮刀(かりがたな)』と名付けたと・・・」
 
「ちょっとわしにも貸してみよ」
興房はその竹の剣を手に取り、
「これはよいわ。・・・ほれ、又二郎よ。相手をしよう。かかってまいれ」
 
又二郎がにこりとして
「本当ですか・・・ありがとうございます」
二人は約十五分ほど打ちあいを行った。
 
さすがに幾多の戦場をかけめぐってきた興房。
又二郎は軽くあしらわれ手も足も出ない。
興房に肩、横っ腹、手首など次々打ち込まれるのだが・・・
一瞬痛みに顔をしかめるも、怯むことなく挑んでいくのである。
 
「おおーー!」と叫びながら激しく、打ち込んでくる又二郎の剣には
激しい気迫がこもっていた。
 
途中、興房をひやりとさせたものもあり・・・
(ほほう、たいしたものじゃわ)
と興房は内心感心した。
 
「又二郎。また腕をあげたな!さらに精進を重ねよ」
「はっ」と答える又二郎の瞳は光り輝いていた。
 
興房はそのまま去っていった。
相手をしてもらえなかった五郎は、
(父からお前はまだまだ・・・・)
と言われた気がして、内心穏やかではなかった。
 
 
 
その昼・・・
 
五郎は、又二郎、百乃介、与吉らと爺の住む小さな屋敷を訪ねた。
爺は最初、城に住んでおったのだが・・・しばらく後に城から少し離れたところに
屋敷を建ててもらい、そこに住むようになっていた。
また、お兼ねという近所の婆さんが通いで、掃除や炊事を行っていた。
 
爺は、屋敷の横に畑をひらき野菜を植えたり、薬草や木を植えたりもしていた。
 
庭で槍の稽古をおこなっていた爺が、
「よう参られた。五郎殿には山の中で時折、兎や猪を食わしてもうたからの・・・
今日は、そのお返しじゃ・・・今日はお兼さんにやすみをやったので・・・
わしが馳走してしんぜよう」
 
見ると、庭に鍋が炊ける用意がすでにしてあった。
「じゃが、その前に腹を減らすために、少々躰を動かそうぞ」
「その縁側に、ぼろの甲冑が四つほどあるでの・・・みな、それをつけよ」
 
「甲冑をつけるのですか・・・」と百乃介がきょとんとして言うと、
 
「そうよ・・・、そう遠くないうちに、みな戦場に行くことになるでの」
そう言いながら、爺は屋敷入っていった。
 
四人が苦労しながら・・・着けようと悪戦苦闘していると・・・
爺が、あっと言う間に甲冑姿で出てきた。
 
「早う、つけなされ!つける速さも強さですぞ。で、今日は剣術じゃ。
仮刀をもってこっちに来られよ」
 
四人が何とか、身に着けおわると・・・
「実際の戦(いくさ)では、槍・薙刀などの長物(ながもの)を使うことが多いが・・・
場合によっては刀で戦わなければいけないことも・・・
まっ、言うより体で覚える方が早い・・どっからでもかかってまいられい。」
 



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