kanossaのブログ

歴史小説や時代小説を綴ることを中心としたブログです。
簡単に読めるものを書いていきます。最初は、戦国時代
に主君大内義隆を殺害し、厳島の合戦で毛利元就に敗れ
散っていった陶晴賢(五郎→陶隆房→陶晴賢)を主人公
とした「TAKAFUSA」を書きすすめます。

TAKAFUSA その10 陶晴賢 おゆうという娘(一)

まえがき


今は陶晴賢子供時代のお話となっています。兄を失い、また愛犬タキを失うという悲しみも体験しながらも、父・母に厳しくも温かく育まれ・・・また、又二郎・百乃介・与吉などの仲間にもめぐまれ、浜の網元の娘お栄にほのかなあこがれを抱く五郎、泣いたり笑ったり危機に陥ったり・・・多感な少年時代をすごしています。今日は、物乞いしているおゆうという娘と五郎が出会います。


その10(一)


その日の夕暮れ時、

物乞いとなっていた爺と五郎は河原に行き、自分たちでこしらえた小屋にいた。


と、寒風が吹く中、ぼろい扉をたたく音が聞こえ、


「のぞいていい?」という可愛い声がきこえた


その声の主は、八つくらいの娘で、名をおゆうといった。

おゆうも一緒にいるおばばとともに物乞いをしており・・・


河原で顔をあわせているうちに仲良くなったのである。


「あんたら、きっと今日も稼ぎ少なかったんでしょ。ハイ!」


と言いながら、一つの饅頭を二人にくれたのである。


こんな境遇にもかかわらず、キラキラ光るつぶらな瞳が印象的な娘であった。


「いつか生き別れた母ちゃんに会うのが夢なんだ!」

そんなことを五郎に語っていたおゆうであった。


あとで・・・

河原でおゆうのおばばと爺(治右衛門)が顔を合わした時・・・おばばが、


「どんな酔狂でやっているのか・・・それは、あんたらの勝手だが・・・

そのおかげで、饅頭半分食い損ねたわ。

あんたらを心配する・・・優しいおゆうには何も言えなくってな・・・」


爺(治右衛門)は、

「誠に、あいすいません・・・」と素直に認め、

おばばに丁寧に詫びたので・・・この二人も仲良くなっていった。


「あの子は実にかわいそうな子でな・・・」

とおばばは、おゆうについて・・・いつか話してくれたそうな。


 その話によると・・・


おゆうの父親というのは金治といい、気性のおとなしい染物職人だったとか。

また見た目は二枚目で、近所の娘たちからはちょいと噂されるほどだった。


しかし、おゆうの婆様にあたる金治の母イネは意地悪く、

それはそれはきつい性根の女で・・・近所でも嫌われものだった。

金治は、そんなイネのいいなりの気の弱い男だった。


イネは嫁にきた、おゆうの母親のお徳とも最初はそう仲悪くなかったそうだが・・・

お徳が近所でいい嫁だと評判があがったのが気に入らず・・・

いびりだしたそうな。


金治はというと、それを止めもせず・・・

お徳もじっと耐えていたのだが・・・。


そこに、

たまたま、イネの知り合いで小金持ちの男の娘フネが

男前の金治を一目みてくびったけとなり・・・


「娘がいてもいいからとにかく金治さんと一緒になりたい」と・・・


また、このフネがいいだしたら聞かない性質(たち)の娘で、

甘い父親は、持参金をたんまりつけるからなんとか・・・という話になり、


イネは渡りに船とばかりに、あれこれ理由をつけて、

お徳を離縁し、家からたたきだした。


「娘はしっかり育てるから、あんたは金輪際合わないように。いいね!」

と鬼のように厳しく言い、さっと引っ越していったそうな。


それでお徳は、おゆうには一切会うことができなくなってしまった。


晴れて一緒になったフネは・・・

金治はもちろんイネやおゆうも大事にし・・・

うまくいっているように見えたのだが・・・・・・



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